目で見る真菌症シリーズ 8
- 細胞内を電子顕微鏡で視る -

 生物を構成する細胞は、さまざまな要素(細胞小器官など)からなっています。電子顕微鏡を使って真菌の細胞内構造を見てみましょう。

Q. 真菌細胞はどんな要素からできているの?
A. 細胞壁、原形質膜、ミトコンドリア、核、核小体、核膜、紡錘極体、リボソーム、滑面小胞体、粗面小胞体、ゴルジ装置、小胞、液胞、自食胞、多胞体、ペルオキシソーム、脂肪滴、グリコーゲン顆粒、微小管、微細繊維、サイトゾル(細胞間基質)などからなっています(図1、2)。


図1:真菌細胞(エクソフィアラ属)の内部構造(左上の写真のみ2万1千倍、他はすべて10万倍)


図2:真菌細胞(エクソフィアラ属)の三次元再構築
図3:各細胞成分の占める体積(エクソフィアラ属)

Q. 紡錘極体って何?
A. 動物細胞の中心小体に相当する小器官で、核の近傍に、電子密度の高い構造物として観察されます。細胞分裂の時に細胞の両極に分かれて、微小管を介して、染色体を引っ張ることにより核分裂を進行させます。

Q. ミトコンドリアって何?細胞にいくつあるの?
A. ミトコンドリアは二重膜に包まれた細胞小器官で、内部にクリステと呼ばれる膜構造を持つのが特徴です。細胞の生活に必要なエネルギーを呼吸により生産しています。エクソフィアラ属という酵母で調べた結果、細胞に17~52個存在します。別の種では、細胞内のミトコンドリアは、全部つながっていたという報告もあります。

Q. リボソームって何?細胞にいくつあるの?
A. リボソームは大きさが22nm(ナノメートル、nmはmmの100万分の1の長さです)くらいの粒子状の構造物で、タンパク質の合成を行っている場所です。エクソフィアラの細胞には、約20万個ありました。

Q. もっとも大きな体積を占める構造物はなんですか?
A. エクソフィアラ属細胞では、サイトゾルが48%、細胞壁が22%の体積を占めていました。核は大きいように見えますが、細胞の体積の7%しかありません(図3)。

Q. 細胞内構造を調べてどんな意味があるの?
A. すべての生物は細胞からなっており、細胞の構造と機能を解明することは、生命の本質を理解するために重要です。電子顕微鏡は光学顕微鏡の2,000倍の解像力をもち、細胞の構造研究に必須の手段の1つです。

【連絡先】 千葉大学真菌医学研究センター 043-222-7171
山口 正視(yama@faculty.chiba-u.jp)
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