目で見る真菌症シリーズ 2
- 真菌の細胞構造 -
ご承知のように、すべての生物は細胞からできています。そしてその生物を構成する細胞の特徴が、細菌、真菌、動物、植物などの特徴をきめているのです。

写真1:大腸菌(細菌)の電子顕微鏡像

図1:細菌細胞の微細構造。細胞壁をもち、染色体は細胞質中に裸で存在していて、リボソームの他にはみるべき構造はありません。

写真2:真菌細胞の微細構造。クリプトコックス(真菌)の電子顕微鏡像

図2:真菌細胞の微細構造。核、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体など多くの細胞小器官をもちますが,細胞壁がある点が動物と異なっています.

写真3:ラット膵臓(動物)の電子顕微鏡像。

図3:動物(ヒト)細胞の微細構造。動物も真核生物で、核、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体などがあり、真菌と細胞構造が非常によく似ています.
Q. 細菌と真菌はどこが違うの?
A. 細菌も真菌も「菌」がつくので同じ仲間だと思われがちですが、細胞の構造は全く異なります。
細菌は染色体DNAが細胞の中に裸で存在していて、原核生物の仲間です(写真1、図1)。
一方、真菌(カビ、酵母、キノコの仲間)は、染色体が膜に包まれた核の中に存在していて、ヒトと同じ真核生物の仲間です(写真2、図2)。
真菌は、核の他にミトコンドリアや小胞体などたくさんの小器官をもっていて、実は高等な生物なのです。
Q. 真菌と動物(ヒト)の細胞はよく似ているの?
A. 真菌(写真2、図2)も動物(写真3、図3)も同じ真核生物で、細胞の構造がよく似ています。
このため真菌を殺す薬剤はヒトの細胞にも有害で、よく効く抗真菌剤が少ないのはこのためなのです。
真菌と動物(ヒト)の細胞の異なる点は、前者が堅い細胞壁を持っていることです。
【連絡先】 千葉大学真菌医学研究センター 山口 正視 |